近年、雑誌やテレビ、SNSで「田舎暮らし」や「地方移住」といった言葉を目にする機会が、以前にも増して多くなったと感じませんか? かつては定年後のセカンドライフというイメージが強かった地方移住ですが、今や子育て世代や20代・30代の若者からも大きな関心を集めるようになっています。認定NPO法人ふるさと回帰支援センターの調査では、2024年の移住相談件数が過去最多を記録し、4年連続で増加していることからも、この流れが一過性のブームではないことがうかがえます。
では、なぜこれほどまでに多くの人が地方への移住に惹きつけられているのでしょうか。その背景には、私たちの社会や価値観の大きな変化が関係しています。
1. 働き方の多様化とリモートワークの浸透
最も大きなきっかけの一つが、新型コロナウイルス感染症の拡大を機に急速に普及したリモートワークです。これまで「仕事は会社でするもの」という常識が覆され、インターネット環境さえあればどこでも働けるようになったことで、「都会に住み続ける必要性」が薄れたと感じる人が増えました。
この変化は、「今の仕事を続けながら、自然豊かな場所で暮らす」という新しい選択肢を生み出しました。実際、通勤の必要がなくなったことで、より広く快適な住環境を求めて、都心から郊外や地方へ移り住むケースが増えています。
2. ライフスタイルの見直しと価値観の変化
コロナ禍は、多くの人にとって自身の生き方や暮らしの豊かさについて見つめ直す機会となりました。[7] 都市部の過密な環境を避け、家族との時間を大切にしたり、自然との触れ合いを求めたりと、生活の質の向上を重視する「ライフスタイル移住」への関心が高まっています。
特に若い世代では、都会の喧騒から離れたい、地方でスローライフを送りたいといった憧れを持つ人が多く、2024年の調査では東京圏在住の15歳?29歳の約45%が地方暮らしに憧れを持っているという結果も出ています。
3. 国や自治体による移住支援の充実
地方の人口減少対策として、国や自治体が移住者向けの支援制度を積極的に打ち出していることも、移住の後押しとなっています。[10] 東京23区に在住または通勤する人が地方へ移住し、特定の条件を満たす場合に支給される「移住支援金」もその一つで、テレワークでの移住も対象となるなど、制度が拡充されています。
こうした金銭的な支援に加え、お試し移住プログラムや空き家バンクの整備、就職相談など、各自治体が特色ある支援を行うことで、移住へのハードルは以前よりも格段に下がってきています。
このように、働き方、価値観、そして社会的な支援体制の変化が組み合わさり、地方移住は今、多くの人にとって現実的な選択肢となっています。しかし、憧れだけで移住を決めてしまうと、「こんなはずじゃなかった」と後悔につながるケースも少なくありません。
以下のセクションからは、後悔しない移住を実現するために、具体的にどのような準備と心構えが必要なのかを詳しく解説していきます。