前のセクションでは、田舎暮らしに抱きがちな「誤解」について解説しました。ここではさらに一歩踏み込み、移住者が日々の暮らしの中で具体的に直面する「不便さ」や、精神的な「孤独感」についてリアルな視点でお伝えします。
1. 日常生活で直面する「不便さ」との付き合い方
都会の「当たり前」は、田舎では「当たり前」ではありません。頭では分かっていても、実際に体験すると想像以上のストレスに感じることがあります。
買い物のハードルが上がる
「ちょっとコンビニへ」が、車で15分以上かかることも珍しくありません。スーパーマーケットの数も限られ、品揃えが少なかったり、閉店時間が早かったりすることも。そのため、1週間分の献立を考えて計画的に買い出しに行くなど、都会での暮らしとは違う工夫が必要になります。また、便利なネットスーパーやフードデリバリーサービスの対象エリア外であることも多く、その不便さを痛感するかもしれません。
医療機関へのアクセス
地域のクリニックはあっても、専門的な治療を受けられる総合病院が遠い、夜間や休日に対応してくれる救急病院が限られている、といったケースは少なくありません。特に持病がある方や小さなお子さんがいる家庭では、いざという時のために、近隣の医療機関の場所や診療時間を事前にしっかりと調べておくことが不可欠です。
インフラの未整備
リモートワークを前提に移住したものの、いざ住んでみたら光回線のエリア外で通信速度が遅く、仕事に支障が出てしまった、という声も聞かれます。また、下水道が整備されておらず浄化槽の管理が必要だったり、プロパンガスで光熱費が思ったより高くなったりと、目に見えにくいインフラの違いが日々の生活に影響を与えることもあります。
2. 人との距離感がもたらす「孤独感」
豊かな自然に囲まれ、穏やかな時間を過ごせる一方で、ふとした瞬間に寂しさや孤立感を感じる移住者は少なくありません。
気軽に会える友人の不在
都会にいれば、仕事帰りに友人と食事をしたり、休日に気軽に集まったりすることができたかもしれません。移住後は物理的な距離が離れてしまうため、そうした機会は激減します。新しい環境でまだ親しい友人ができていない時期は、特に強い孤独を感じやすいでしょう。
コミュニティに馴染めない孤立
前節で触れたように、地域のコミュニティには独自のルールや雰囲気があります。勇気を出して地域の集まりに参加してみたものの、価値観や話が合わずに馴染めず、かえって疎外感を覚えてしまうこともあります。特に、移住者を受け入れる土壌がまだ整っていない地域では、「よそ者」扱いを受けているように感じ、孤立してしまうケースもあります。
家族、特にパートナーの孤立
移住に積極的だったのは自分だけで、パートナーは仕方なくついてきてくれた、という場合、注意が必要です。自分が仕事や地域の活動で新しい人間関係を築いている間に、パートナーは知り合いもおらず家に閉じこもりがちになり、孤独感を深めてしまうことがあります。移住は家族全員の問題として捉え、お互いの心のケアを意識することが非常に重要です。
こうした「不便さ」や「孤独感」は、多くの移住者が経験する可能性のある、いわば「移住のリアル」です。しかし、これらを乗り越え、自分たちなりの楽しみ方を見つけて充実した田舎暮らしを送っている人がたくさんいるのも事実です。
大切なのは、こうした現実から目をそらさず、「そういうこともあるんだな」と受け止める準備をしておくこと。次のカテゴリーからは、これらのギャップを乗り越え、後悔しない移住を実現するための具体的な「準備」と「心構え」について、さらに詳しく解説していきます。