メディアやSNSで描かれる田舎暮らしは、あくまで「良い部分」を切り取ったもの。まずは、多くの人が抱きがちな理想と、その裏にあるリアルな現実を見ていきましょう。
田舎暮らしの理想
窓の外には絵葉書のような美しい景色が広がり、鳥のさえずりで目覚める。休日はハンモックに揺られて読書…。都会の喧騒から離れ、穏やかで美しい自然が心と体を癒やしてくれるはず。
田舎暮らしの現実
自然は、ただ美しいだけではありません。時には厳しく、そして手のかかる存在です。
虫や野生動物との共存は必須
家の中に当たり前のように虫が出ます。都会では見かけないような大きなクモやムカデ、夏場には大量発生するカメムシなど、虫が苦手な人にとっては想像以上のストレスになるかもしれません。 また、シカやイノシシ、サルといった野生動物による畑の被害や、クマの出没情報を耳にすることも珍しくなく、自然の厳しさを身近に感じることになります。
想像以上のメンテナンス作業
庭付きの一戸建てに憧れる人は多いですが、それは同時に終わりのない草むしりとの戦いを意味します。 夏場は少し油断しただけですぐに雑草が生い茂り、家の周りの草刈りや落ち葉の掃除など、日々の管理が想像以上に重労働となることがあります。
自然災害との隣り合わせ
台風や大雨による土砂災害のリスク、冬には大雪で道が閉ざされ、孤立してしまう可能性もあります。 美しい自然は、時に人の暮らしを脅かす存在にもなり得るということを理解しておく必要があります。
田舎暮らしの理想
都会の希薄な人間関係とは違い、ご近所さんはみんな親切。野菜をおすそ分けし合ったり、困ったときには助け合ったりする、人情味あふれる温かい関係が築けるはず。
田舎暮らしの現実
もちろん温かいコミュニティは存在しますが、それは都会とは異なる「濃密さ」と表裏一体です。
プライバシーとの距離感
地域のつながりが強い分、「誰がどこで何をしているか」といった情報がすぐに広まることも。 干渉されていると感じたり、プライバシーがないと感じたりする人もいるでしょう。都会の匿名性に慣れていると、この距離感に戸惑うかもしれません。
消防団や地域の共同作業への参加
多くの地域には、消防団や地域の清掃活動、お祭り、寄り合いといった共同体が維持されており、移住者であっても参加が半ば義務となっている場合があります。 これらを「面倒だ」と感じるか、「地域に溶け込むチャンス」と捉えるかで、満足度が大きく変わってきます。
独自のルールや”しきたり”
ゴミ出しの細かいルールや、回覧板の回し方、冠婚葬祭の作法など、その地域ならではの暗黙のルールや”しきたり”が存在することもあります。 「よそ者」と見なされず、良好な関係を築くためには、こうした文化を尊重し、謙虚に学ぶ姿勢が求められます。
田舎暮らしの理想
家賃も安いし、野菜も安く手に入るから、都会に比べて生活コストはぐっと抑えられるはず。経済的なゆとりが生まれるだろう。
田舎暮らしの現実
確かに家賃や土地代は安い傾向にありますが、必ずしも生活費全体が安くなるとは限りません。
必須となる車の維持費
公共交通機関が発達していない地域では、車は生活必需品です。 通勤や買い物、子どもの送迎など、家族の人数分だけ車が必要になることも珍しくありません。車両の購入費や保険、税金、ガソリン代など、車の維持費は家計に重くのしかかります。
意外と高いインフラ費用
都市ガスが通っておらず、料金が割高なプロパンガスを利用する地域が多いです。 また、上下水道の料金が都会より高い場合もあります。
収入減の可能性
地方は都市部に比べて平均賃金が低い傾向にあります。転職によって収入が下がる可能性も十分に考慮し、支出だけでなく収入とのバランスで家計を考える必要があります。
これらのギャップを知って、「やっぱり田舎暮らしは大変そうだ」と感じたかもしれません。しかし、これらは田舎暮らしの「デメリット」というよりも、事前に知っておくべき「特徴」です。
大切なのは、こうした現実を理解した上で、「自分たちのライフスタイルに合っているか?」を冷静に判断すること。そして、もし移住を決めたなら、これらの特徴を受け入れ、楽しむくらいの心構えを持つことです。