ここでは、よく似た家族構成で同じように田舎暮らしに憧れた、Aさん一家とBさん一家の架空の物語をご紹介します。彼らの選択の違いが、どのように未来を変えたのかを見ていきましょう。
移住の動機
夫は都内のIT企業に勤めるリモートワーカー。妻は元保育士。「自然豊かな環境で、のびのびと子育てがしたい」という明確な目的を持ち、1年以上かけて移住計画を進めた。
移住前の行動
情報収集と現地訪問：候補地の自治体が主催するオンライン移住相談会に複数回参加。気になる地域には、季節を変えて4回以上訪問。観光ではなく、スーパーや病院を巡り、生活者としての視点でチェックした。
お試し移住：夏休みに1ヶ月間、市の「お試し移住住宅」を利用。地域の気候や虫の多さ、自治会の雰囲気を肌で感じ、「これならやっていけそう」という確信を得た。
住まい：いきなり購入はせず、まずは地元の不動産屋で見つけた賃貸アパートからスタート。
仕事：夫は会社と交渉し、完全リモートワークの許可を得る。妻は地域の保育園のパート求人を見つけ、移住後の生活リズムができてから働く計画を立てた。
移住後の暮らし
引っ越し挨拶を丁寧に行い、自治会の清掃活動や夏祭りにも積極的に顔を出した。「わからないので教えてください」という姿勢が功を奏し、ご近所さんからは野菜のおすそ分けをもらったり、子育ての相談に乗ってもらったりと、良好な関係を築けた。生活の不便さも「想定内」として楽しみ、2年後、地域の人からの紹介で、状態の良い中古物件を購入。充実した田舎ライフを送っている。
移住の動機
夫婦ともに都会での仕事に疲れ、「雑誌で見たようなスローライフを送りたい」と漠然とした憧れを抱き、移住を決意。計画期間は3ヶ月だった。
移住前の行動
情報収集と現地訪問：インターネットの情報や写真だけを頼りに移住先を決定。現地訪問は、物件の契約時に一度訪れただけ。
住まい：「格安」という言葉に惹かれ、空き家バンクで見つけた古民家を内覧せずに契約してしまった。
仕事：「行けば何とかなるだろう」と考え、夫婦ともに退職。具体的な仕事のあてはないまま移住した。
移住後の暮らし
住み始めた古民家は、雨漏りや設備の不具合が次々と発覚。想定外の修繕費に、貯金がみるみる減っていった。ハローワークに通うも、都会でのキャリアのプライドが邪魔をして、希望の条件に合う仕事はなかなか見つからない。地域の集まりにも「面倒だ」と参加しなかったため、近所からは「付き合いの悪い人たち」と見なされ、孤立感を深めていった。理想とかけ離れた現実に夫婦喧嘩が増え、わずか1年で「こんなはずじゃなかった」と、都会へ戻ることを決めた。
成功と失敗の分かれ道はどこにあったのか？
Aさん一家とBさん一家の明暗を分けたのは、運の良し悪しではありません。その差は、このブログで繰り返しお伝えしてきた**「事前の準備」と「心構え」**にありました。
目的の明確さ：Aさんには「子育て」という具体的な軸があったが、Bさんは「スローライフ」という漠然とした憧れだった。
情報収集の質と量：Aさんは足を使ってリアルな情報を集めたが、Bさんはネットの表面的な情報で判断した。
リスク管理：Aさんは「お試し」や「賃貸」で失敗のリスクを減らしたが、Bさんはいきなり大きな決断をしてしまった。
謙虚な姿勢：Aさんは地域に溶け込もうと努力したが、Bさんは都会の価値観を持ち込み、孤立した。
Bさん一家の物語は、誰にでも起こりうる話です。憧れだけで突っ走るのではなく、現実を直視し、一つひとつ丁寧な準備を重ねていくこと。それこそが、後悔しない田舎移住を実現するための、唯一の道なのです。
