自治会には入るべき?活動内容と私たちの関わり方

a group of people in a field 地域との関わり

a group of people in a field

はじめに:移住者が直面する、見えない「壁」

こんにちは。山陰の小さな村で暮らしております、タカシです。

田舎暮らしを検討する際、多くの方が住まいや仕事、お金の問題に頭を悩ませることでしょう。しかし、それらの具体的な課題とは別に、もう一つ、移住者の前に立ちはだかる見えない「壁」が存在します。それが、「自治会」という、地域特有のコミュニティ組織との関わり方です。

「役員が回ってきて、大変な仕事をさせられるのではないか」「昔ながらのしきたりが面倒くさそうだ」「そもそも、入らないという選択肢はあるのだろうか」。都会の希薄な人間関係に慣れた身からすれば、その響きにはどこか強制的で、厄介なイメージがつきまとうかもしれません。私たち夫婦もまた、移住前はこの「自治会」という存在に、少なからず不安と警戒心を抱いていました。

では、この村で五年という月日を過ごした今、この問いにどう答えるか。結論から申し上げますと、私たちの答えは「入るべきか、否か、で悩むこと自体がナンセンス。自治会は、田舎で心豊かに、そして何より安全に暮らしていくための、必要不可欠なライフラインである」というものです。今回は、その理由を、私たちの自治会の具体的な活動内容と、私たちなりの関わり方を通してご説明したいと思います。

我が村の自治会、そのリアルな活動内容

まずご理解いただきたいのは、「自治会」と一口に言っても、その活動内容は地域によって千差万別だということです。都会のマンションの自治会と、私たちの村の自治会とでは、その役割も、求められる参加度も全く異なります。私たちの自治会(正確には、村の中のさらに小さな「区」という単位の集まり)の主な活動は、大きく分けて三つあります。

活動1:美しい景観と安全を守る「共同作業」

最も代表的な活動が、地域の環境を維持するための共同作業です。春には「道普請(みちぶしん)」と呼ばれる、農道や水路の簡単な補修作業があります。そして、夏から秋にかけては、年に数回、集会所や神社の周りの「草刈り」が行われます。これらは、私たちが愛して移住してきたこの村の美しい景観を、住民みんなの手で守っていくための大切な活動です。六十五歳の体には正直、骨が折れる時もありますが、体を動かした後の爽快感と、皆で汗を流す一体感は、何物にも代えがたいものがあります。

活動2:世代を超えた交流の場となる「地域行事」

私たちの区には、秋に小さな神社で開かれる例祭があります。その準備や運営も、自治会の重要な役割です。当日は、男衆はテントを張ったり、お神輿の準備をしたり。女性陣は集会所に集まって、お供え物や直会(なおらい)の料理を作ります。料理上手な妻は、この時ばかりは率先して腕を振るっており、地域のお母さん方との大切な交流の場となっています。子供たちの元気な声と、ご長寿たちの穏やかな笑顔が交差するこの空間は、まさに地域の縮図。こうした行事を通じて、私たちは少しずつ、この土地の歴史と文化の一員になっていくのだと感じます。

活動3:日々の安心を支える「情報共有と相互扶助」

そして、最も実利的な役割が、情報の共有です。村の広報や行事の案内は、「回覧板」によって各戸に届けられます。また、熊の出没情報や、不審者情報といった安全に関わる緊急連絡網も、自治会が機能しているからこそ迅速に伝達されます。特に私たちのような高齢者だけの世帯にとって、いざという時に頼れるご近所さんの顔が見える関係が築けていることは、何よりの安心材料です。これは、お金では決して買うことのできない、地域コミュニティがもたらすセーフティネットなのです。

私たちのスタンス:「できることを、できる範囲で」誠実に関わる

とはいえ、私たちも六十五歳。体力のある若い世代と全く同じように活動できるわけではありません。事実、私たちは年齢制限のため、地域の安全を守る「消防団」には参加していません。では、どのように自治会と関わっているのか。私たちの基本スタンスは、「できないことは正直に伝え、その上で、自分たちにできることを、できる範囲で、しかし誠心誠意行う」という、非常にシンプルなものです。

例えば、夏の草刈り。私たちは、エンジン付きの重い草刈機を振り回すような作業は、正直もう体にこたえます。その代わり、刈り取った草を集めて軽トラックに積んだり、皆のためにお茶を沸かしたりといった、後方支援に徹します。また、妻は料理という得意分野で地域に貢献しています。

大切なのは、「高齢だから」と最初から線を引いて何もしないのではなく、「参加する意思」を明確に示し、その上で自分たちにできる役割を見つけていくことです。幸い、この村では、そうした私たちの状況を誰もが理解し、尊重してくれます。「タカシさん、無理しなさんな」「奥さん、いつも美味しい煮物ありがとうね」。そんな温かい言葉が、私たちの心を軽くしてくれるのです。

まとめ:自治会は「義務」ではなく、豊かな暮らしへの「権利」

移住前、私たちが抱いていた「自治会」への不安は、それが「義務」や「負担」といった、ネガティブなものとして捉えていたからでした。しかし、五年間の暮らしを経た今、私たちはそれを、この村で心豊かに、そして安全に生きていくための「権利」であり、地域と繋がるための「パスポート」なのだと捉えています。

もちろん、時には意見がぶつかったり、面倒だと感じたりすることもあります。しかし、それらも含めて、人と人が関わり合って生きていくことのリアルなのだと思います。もしあなたが田舎暮らしを考え、自治会の存在に不安を感じているのなら、どうか恐れないでください。それは、あなたを縛るものではなく、あなたの新しい暮らしを、根底から支えてくれる、最も頼もしい味方になるはずですから。

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