薪ストーブと薪ボイラー、導入費用と1年間の燃料費はいくら?

生活費

はじめに:暮らしの中心にある「火」という贅沢

こんにちは。山陰の山村で暮らすタカシです。ブログ「田舎移住の光と影」へようこそ。

田舎暮らしと聞いて、多くの方が思い浮かべる風景の中に、きっと「薪ストーブ」があるのではないでしょうか。パチパチと音を立てて燃えるオレンジ色の炎、その前に置かれたロッキングチェア…。それは、私たちが移住を決める前から抱いていた、憧れの象徴そのものでした。

そして、もう一つ。私たちの暮らしに欠かせないのが「薪ボイラー」です。スイッチ一つでお湯が沸く便利な生活から、自分たちの手で薪をくべ、湯を沸かす生活へ。この二つの「火」を暮らしの中心に据えることこそ、私たちが求めていた豊かさの形でした。

しかし、このロマンあふれる生活は、当然ながら現実的な「お金」の話と切り離すことはできません。憧れだけで飛び込んでしまうと、思わぬ出費に頭を抱えることになりかねません。今回は、私たちの実体験に基づき、薪ストーブと薪ボイラーを導入するためにかかった初期費用と、気になる一年間の燃料費について、具体的な数字を交えながら、ありのままにお話ししたいと思います。

【導入費用編】夢の実現にかかった、決して安くはない初期投資

私たちが現在の古民家を選んだ理由の一つに、「薪ストーブと薪ボイラーを設置するのに適していた」という点があります。特に薪ストーブは、煙突を安全に設置できる構造が不可欠です。これから家を探される方は、ぜひその点も考慮に入れることをお勧めします。

その1:暮らしの主役「薪ストーブ」の導入費用

まずは、冬の間の我が家の主役、薪ストーブにかかった費用です。これは大きく三つの要素に分けられます。

* **薪ストーブ本体価格:約40万円**
私たちが選んだのは、暖房能力と燃費のバランスが良い、鋳物製の中型クラスのものです。価格はピンからキリまでありますが、家の広さやデザインの好みなどを考慮し、このクラスに落ち着きました。

煙突と設置工事費:約60万円
実は、本体よりもお金がかかるのが、この煙突と設置工事費です。煙突は、火災を防ぎ、ストーブの性能を最大限に引き出すための、いわば「心臓部」。安全性に直結するため、ここは絶対に妥協してはならない部分です。私たちは、断熱性の高い二重煙突を選び、信頼できる専門の業者さんに屋根の貫通工事からすべてお願いしました。

炉台・炉壁の設置費用:約10万円
ストーブの熱から床や壁を守るための炉台(ろだい)と炉壁(ろへき)も必須です。耐火レンガを自分たちで積む(DIY)という選択肢もありましたが、私たちは安全を最優先し、これも業者さんにお願いしました。

これらを合計すると、**薪ストーブの導入費用は、総額で約110万円**。正直に申し上げて、決して安い買い物ではありませんでした。退職金の一部を充てる覚悟が必要な、大きな投資でした。

その2:日々の癒し「薪ボイラー」の導入費用

次に、毎日のお風呂を沸かしてくれる薪ボイラーです。薪ストーブに比べると、こちらは少し費用を抑えることができました。

薪ボイラー本体価格:約25万円
こちらも様々な種類がありますが、私たちは比較的シンプルな構造で、故障が少ないと評判の国産メーカーのものを選びました。

設置工事費:約10万円
既存の給湯設備に接続するための配管工事などが必要になります。これも地元の水道設備屋さんにお願いしました。

薪ボイラーの導入費用は、合計で約35万円。薪ストーブと合わせると、初期投資の総額は約145万円にのぼりました。

【燃料費編】気になる一年間の「薪代」はいくら?

さて、大きな初期投資を経て手に入れた薪のある暮らしですが、当然ながら、それを燃やし続けるための「燃料費」がかかります。「薪なんて、山に行けばタダで手に入るだろう」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、現実はそう甘くはありません。

我が家の薪の調達方法

私たちの村では、冬は11月から4月頃までの約半年間、暖房が欠かせません。その間に消費する薪の量は、軽トラックの荷台に山盛りで5〜6台分ほどになります。この膨大な量を確保するため、私たちは三つの方法を組み合わせています。

方法1:自分たちで確保する(無料だが、労力という最大のコストがかかる)
幸いにも、知り合いの山主さんのご厚意で、間伐した木をいただくことがあります。しかし、それを運び出し、チェーンソーで切り、斧で割り、一年以上乾燥させる…。この一連の作業は、六十五歳の体には相当な負担です。チェーンソーや軽トラックのガソリン代もかかります。自分たちだけで一年分を賄うのは、体力的に不可能です。

方法2:原木(丸太)で購入する(比較的安価)
地元の林業組合などから、まだ割っていない丸太の状態で薪を購入します。私たちの地域では、軽トラック一台分(約500kg)で一万円ほどが相場です。ここから自分で薪割りと乾燥をさせる手間はかかりますが、コストを抑えることができます。

方法3:乾燥済みの薪を購入する(最も高価)
薪販売業者さんから、すぐに使える状態に乾燥・カットされた薪を購入する方法です。一番楽ですが、価格は最も高くなります。軽トラック一台分で二万円から二万五千円ほどが相場です。

我が家のリアルな年間燃料費

以上の三つの方法を組み合わせ、我が家の一年間の薪代を計算してみましょう。

* 自分たちで確保:軽トラ1台分(労力はプライスレス)
* 原木で購入:軽トラ2台分 × 10,000円 = 20,000円
* 乾燥薪で購入:軽トラ2台分 × 25,000円 = 50,000円

これを合計すると、**一年間の薪代は、およそ70,000円**。これに加えて、チェーンソーのオイル代やメンテナンス代などが年に一万円ほどかかりますので、**年間の燃料費は合計で約80,000円**というのが、我が家のリアルな数字です。

まとめ:コストを超えた価値が、炎の向こう側にある

導入に約145万円、そして年間の維持に約8万円。この数字だけを見ると、「なんてお金のかかる贅沢なんだ」と思われるかもしれません。確かに、灯油やガス、電気といったエネルギーに比べれば、手間もコストもかかります。

しかし、私たちはこの選択を一度も後悔したことはありません。なぜなら、この「火」のある暮らしがもたらしてくれるものは、単なる暖かさやお湯ではないからです。

冬の寒い日、薪ストーブの前に座り、揺らめく炎を眺めていると、時間が経つのを忘れます。家全体が陽だまりのようにじんわりと暖まり、その上でコトコトと煮込む妻の料理は、格別の味がします。自分たちの手で薪を割り、沸かしたお風呂に肩まで浸かる時の「ああ、極楽だ」というため息。これらのかけがえのない瞬間は、お金には換算できない、私たちの人生の「宝物」です。

薪ストーブと薪ボイラーは、単なる設備ではありません。それは、私たちの暮らしの中心であり、手間ひまをかける喜びを教えてくれる、頼もしいパートナーなのです。

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